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アメリカコース 教員

宇佐見 耕一(ウサミ コウイチ)

英語表記 Koichi USAMI
職名 教授
研究者情報 研究者データベース

学生へのメッセージ

 私の研究フィールドとしている諸国は、ラテンアメリカ諸国です。その中でも特にアルゼンチンを中心に研究してきました。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスは、地球上で東京のほぼ反対に位置しています。地理的に日本から最も遠い場所にあります。アルゼンチンに行く前に、学生時代にメキシコやペルーを旅して先住民文化の痕跡が今も根強く残っているのを感じました。ところがブエノスアイレスに着くと、住民はイタリア系やスペイン系を中心としたヨーロッパ系移民の子孫が圧倒的で、それまでイメージしていたラテンアメリカとは異なるラテンアメリカに出会いました。
 アルゼンチンに滞在中、1989年には年率5,000%を超えるハイパーインフレ、また2001年にも経済危機、翌年のブエノスアイレス市の貧困率は50%近くに達するのを目撃しました。こうした経済危機に対して、労働組合はストライキを含む抗議活動を行い、また貧困層は道路封鎖をして抗議し、政府に対策を求めました。このような抗議に対して、政府や企業は賃上げを行い、貧困対策を拡充しました。しかし、そうした社会政策をよくみると、全国民に対して全て同じ政策が採られていないことがみえてきます。例えば、医療制度についてみると、高所得層は民間の医療保険と医療機関を利用します。また正規雇用労働者は、会社と労働者が保険料を支払う社会保険の医療保険を利用し、しかもその多くが労働組合により運営されています。また、社会医療保険もそれぞれの業種ごとに組織が分かれ、提供される医療サービスも異なります。医療保険を持たない人々は、無料で全国民を対象とした公立病院を利用しますが、長い待ち時間、老朽化した設備や不足する無料薬剤等の問題を抱えています。なぜこのような階層化され分断した医療制度が形成されたのでしょうか。こうした医療制度の枠組みは政治過程で形成されるため、政治の動きに注目して、なぜこのような制度になったのかを考えるようになりました。そうした問題の分析には、現地で感じた問題意識を基に学問的な研究課題を作成し、それを分析する方法論の習得が必要となります。同志社大学で、いろいろなメディアで知りえたみなさんの関心事項を学問的体系の中で研究課題に作り変え、それを分析する手法を身につけられるよう一緒に調査し、考えてゆきたいと思っています。

プロフィール(経歴、趣味、等)

 ラテンアメリカに関する興味は、高校生の地理の時間から持っていました。日本から地理的に一番遠い場所には、どのような人々の暮らしがあるのだろうかという未知なものに対する好奇心が始まりです。大学に入学すると迷わずラテンアメリカ研究コースを選びました。その当時ラテンアメリカは未だ遥かに遠く、学部でラテンアメリカを選択した学生は私一人でした。大学院に入り、初めて訪れた外国がメキシコでした。そのメキシコに1年間留学し、その時の強烈な体験は今も昨日のように思い出されます。その後アジア経済研究所でアルゼンチンを研究することになり、2年間の滞在を2回して、合計4年間ブエノスアイレスに滞在しました。ブエノスアイレスで結婚し、子どもが生まれ、その後毎年アルゼンチンを訪問し、アルゼンチンはまさに第二の故郷であるといえます。アルゼンチン滞在中に5,000%のハイパーインフレを体験し、経済危機による失業や貧困の拡大、また労働運動が盛んなのを目にして、人々の生活を支える社会政策への関心が深まり、今日に至っています。
 ブエノスアイレスには世界三大オペラ座のコロン劇場があり、日本より安くコンサートやオペラ、バレエを鑑賞しに行くことができました。コロン劇場の天井桟敷からオペラを鑑賞したこともあります。そこには本当にオペラ好きに人々が集まっていました。日本でも機会を見つけてコンサートに行っています。もっとも、世界の三大オペラ座にコロン劇場が入るかどうかについては議論があるようです。また、少年の頃から鉄道が好きで、それはいまも変わりません。小説は村上春樹のファンです。『海辺のカフカ』は最高ではないでしょうか。

研究内容

 年金、失業保険、医療保険等の社会保険、高齢者や貧困者への福祉、また働く人々の雇用条件等を決める労働法がどのような特質を持ったものであり、それがどのように形成され、さらに人々の暮らしにどのような影響を与えているのかという社会政策という分野を研究しています。特に各政策がどのように形成されたのかという問題に関して、政治学的アプローチの分析を中心にしていますが、社会学の成果も取り入れつつ研究を行っています。研究対象は南米のアルゼンチンが中心でした。そこには第二次世界大戦後にペロン政権というポピュリズム政権が成立し、労働者への保障を拡大しました。軍部の右派出身のペロンが何故、労働者への保障を拡大したのかといことに関心を持ちました。また、ペロン大統領夫人で映画やミュージカルの主人公にもなったエビータは、貧しい人々のために尽力しました。エビータの実際の活動がどのようなものであり、それがペロン政権とどのようにかかわっていたのかという点にも同時に関心をもちました。これらが、私のアルゼンチンにおける社会政策や福祉政策研究の出発点であり、その後研究対象を対貧困政策、高齢者政策、労働法、福祉国家論に拡大してゆきました。また対象国もアルゼンチンに留まらず、キューバやコスタリカなど中米やカリブ海諸国まで拡大しています。

主要業績

  • 著書:『アルゼンチンにおける福祉国家の形成と変容:早熟な福祉国家とネオ・リベラル改革』(旬報社、2011年)
  • 編著:Non-Standard Employment under Globalization: Flexible Work and Social Security in the Newly Industrializing Countries, Basingstoke(Palgrave Macmillan, 2010.)
  • 編著:『新興福祉国家論 アジアとラテンアメリカの比較研究』(アジア経済研究所、2003年)
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