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アジア・太平洋コース 教員

王 柳蘭(オウ リュウラン)

英語表記 Liulan WANG-KANDA
職名 准教授
研究者情報 研究者データベース

学生へのメッセージ

 現在、東南アジアをはじめ世界のさまざまな地域から渡ってきた移民が日本で暮らし、コミュニティを形成しています。多文化社会という言葉もよく耳にするようになりました。その一方で、私たちは依然として、ヨーロッパやアメリカに対する親近感と英語に典型的にみられるように、西洋的な文化・思考の影響を部分的に受けながら、外国の人とコミュニケーションするスキルをみにつけてきたと思います。果たして、アジアに位置する日本において求められる柔軟かつ拓かれたコミュニケーション能力とは何でしょうか。
 わたしは1995年からタイ/ミャンマー国境に暮らす中国系ムスリム移民の暮らしについて調査・研究してきました。調査に行き始めたのは、大学院生のときですが、そのとき以来、日本では知ることができなかった、東南アジアの人々の文化、宗教、民族について身をもって体験し、そこに暮らす現地の人びとの崇高な生き方や自然環境に適応しながら豊かに生きている智慧を学ばせてもらいました。
 フィールドワークを通じて、異なる文化に接し、まさに身をもって他者を理解していく営みは、たえなまい自己との葛藤をへて、あたらしい知的世界と好奇心に満ちた出会いを導いてくれます。外に出なくてもネットから情報を取捨選択するという時代のなかで、自分の目で観察し、自分の足で歩き、自分で問題意識を発掘するプロセスの重要性はますます高まってくると思われます。
 多元的なアジアの香りをぜひ学生時代に経験してほしいです。きっと、今まで知らなかった想像以上の魅力的な世界の広がりに気づくでしょう。そのことは、学生時代のみならず、生涯にわたってオータナティブな発想や生き方を喚起させ、日常生活の多様性を広げてくれると思います。ぜひ、一歩ソトにでて、アジアを再発見するフィールドトリップを経験してみてください。

プロフィール(経歴、趣味、等)

 私はこれまで、アジアを越境する中国ムスリムに惹かれて、タイや中国、台湾を訪問し、移民・難民のもつ創造力と重層的なアイデンティティから多くを学び、そこから、国家や多民族と折り合いをつけながら柔軟に生き抜く知恵と多文化共生につながる鍵とは何かについて考えてきました。学部学生時代にサークルの仲間と一緒にモンゴルを訪問したのがきっかけで、英文学科を卒業後、文化人類学の道を選びました。異文化を知ることは頭では理論的にも観念的にも不可能ではないですが、カラダを通して他者を理解し、受け入れることはとてつもない労力とエネルギー、さらには自身との葛藤が求められます。その苦い経験をフィールドワークで経験してきたことが、いまのわたしにとって何にもかえられない財産となっています。

研究内容

 移民・難民を問わず、全ての人が基本的権利・欲求を満たすことができ、しかも一人ひとりの尊厳がまもられる社会を作って持続させるにはどうすればいいのでしょうか。また、そのような暮らし方はどうすれば可能になるでしょうか。これまで、移民研究を軸にして、「持続可能な多文化共生」をテーマに研究してきました。これまでの主な研究テーマは以下の二つです。
 ひとつは、東南アジア・東アジアにまたがる移民、とくに中国系の人たちをめぐって宗教、民族、文化の共生についてです。そのなかでもイスラームを信仰する移民がタイの多民族状況下でどのように暮らしているのかについて経験的研究をしてきました。その成果は、『越境を生きる雲南系ムスリム―北タイにおける共生とネットワーク』(2011年、昭和堂)にまとめました。現在では、中国系移民とキリスト教の関わりについて関心をひろげています。
 2つめは、カラダを通じて医食文化を考えることです。食文化や医療文化は生態的かつ民族的要素、さらには異文化接触による変容によって、多様性と地域の独自性を形成しています。わたしはこれまで、タイやフィリピンでは薬用植物を採集し、女性たちの暮らしがハーブによっていかに支えられているのか調べました。その成果の一端は、『出産前後の環境―からだ・文化・近代医療』(1999年、昭和堂)に共著として書きました。
 以上のように、持続可能な多文化共生について、身近な暮らしを支える宗教やカラダ(食、医療)を通して多角的に理解したいと思っています。

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