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ヨーロッパコース 教員

伊藤 玄吾(イトウ ゲンゴ)

伊藤 玄吾
英語表記 Gengo ITO
職名 准教授
研究者情報 研究者データベース

学生へのメッセージ

 自分はどうして大学に行くのか、本当に真剣に考えたことのある方はどのくらいいるでしょうか。同世代で大学に行かない人々-日本だけでなく、グローバル化した時代において日本と密接につながる世界の様々な地域に生きる同世代の人々たちに対して、もしくは高い税金を払いながら毎日ぎりぎりの生活をしている人々に対して、どのようにして自分の大学進学を説明するでしょうか。莫大な教育予算と優れた設備を有しながら、本当の「学び」が危機に瀕していると言われるこの日本において、大学を目指す皆さんにも考えていただきたいと思います。といっても初めから何か模範的な答えを準備するのではなく、正直に、「周りのみんなが当然のように大学へ行くから」、「大卒ということで良い就職をしたいから」、または「社会に入る前に十分に遊んでおきたいから」というようなことから出発しても構いません。その上で、自分はどうしてそのように思うのか、またそれは本当に自分が欲していることなのか、またそういう場合の「社会」とは、「良い就職」とは、そもそも「良い」とは何なのか、「遊ぶ」とは何かについてほんの少しだけでも考えてみてください。はっきりした答えが出なくても構いません。なかなか答えの出ない問題について辛抱強く問いつづけ、考えていく力、それが本来大学で最も必要とされている力であります。「受験で忙しくてそんなことを考えている暇はない!」という方もおられるかもしれませんが、受験後もずっと忙しくて考えている暇がなくならないよう十分お気を付け下さい。

プロフィール(経歴、趣味、等)

 1970年東京都生まれ福島県育ち。京都大学文学部を卒業、大学院に進学後、フランスに留学しパリ第7大学、パリ第10大学などで6年ほど学びました。フランス・ルネサンス期(16世紀)の文学と思想を軸に、ギリシア語・ラテン語をはじめとする諸古典語、さらに中世・ルネサンス音楽の理論と実践について学びました。ルネサンス期の学者には、レオナルド・ダ・ヴィンチならずとも、あらゆるものを学びとろうという恐るべき知的エネルギーを持つ人物が多く、そうした人々が書き記したものを読んでいるうちに、それに影響されてついつい様々な分野に手を出してしまいました。私は文学であれ、音楽であれ、その他の分野であれ、理論と実践の両方に興味があり、研究対象に対しては、手や声などを通して体全体で触れ、関わっていくことが大切だと常に思っています。私が取り組む研究は長い時間を要するものがほとんどですが、研究をすることの喜びは人一倍感じていると思います。

研究内容

 専門的な研究テーマは16世紀中期から後期にかけてのフランスの文学・思想・音楽で、特にアントワーヌ・ド・バイフという詩人の作品、中でもこの詩人による旧約聖書詩篇の翻案とその音楽的実践に関するものですが、同時にそれと密接に関連するいくつかの大きなテーマについても比較的深く研究してきました。まずは宗教改革の時代における聖書学、とりわけヘブライ語およびユダヤ教について、次に16世紀の西欧の知識世界-自然学に限らずギリシア・ローマの古典を中心とした学問-が宣教師たちを通していかに同時代のアジア地域そして日本にもたらされていたかについて関心をもって研究をしています。16世紀という時代はヨーロッパ世界の拡張によって、非ヨーロッパ地域の旧来の社会や学問がさまざまな挑戦を受けただけでなく、同時にヨーロッパ自体の社会や学問の在り方が再検討に付されることになった極めてダイナミックな時代であり、現代の我々にも強く語りかけてくるものがあります。

主要業績

  • 「詩人バイフの旧約聖書詩篇翻案の生成―十六世紀における詩と音楽の奇妙な結合」
    (田口紀子、吉川一義編『文学作品が生まれる時 生成のフランス文学』、京大出版会、2010年、pp.21-51)
  • « L'antiquité et le progrès de la métrique dans les traductions « érudites» des psaumes » au XVIe siècle », Actes du colloque intenational : Traduction et critique pour commémorer le 500ème anniversaire de la naissance d'Etienne Dolet (1509-1546) , Séoul, Publication de l'institut d'études de traduction et de rhétorique, Université de Korea, 2009, pp. 189-201.
  • 「フィリップ・メランヒトンによるヘシオドス『仕事と日』注解―宗教改革時代の古典解釈の一断面」(高等研報告書1102「近代精神と古典解釈-伝統の崩壊と再構築-」、2012年、pp.238-255)
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