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アメリカコース 教員

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和泉 真澄(イズミ マスミ)

和泉 真澄
英語表記 Masumi IZUMI
職名 教授
研究者情報 研究者データベース

学生へのメッセージ

 アンパンマン vs ポケットモンスター。どちらが強いヒーローだと思いますか?『CharaBiz DATA2012⑪』によれば、2011年国内市場におけるキャラクター商品の年間売上高と市場シェアは、1位が「それいけ!アンパンマン(1,210億円、7.54%)」、2位が「ポケットモンスター(1,076億円、6.70%)」(3位と4位は「ミッキーマウス」と「ハローキティ」)となっています。一方世界市場に目を移した場合、映画・アニメ・ゲームソフト・キャラクター商品を含めたポケットモンスターの売り上げは、何と3兆5000億円!世界中の子どもが中毒になっていると、アメリカの『Time』誌でも取り上げられたほど、グローバル世界で絶大な影響力を誇っています。ではなぜ、アンパンマンは越境しにくいのに対し、ポケモンは自由に国境を飛び越え、世界に受け入れられるのでしょう?一つの理由は、アンパンマンが日本の食べ物というローカルな文化コンテキストに依拠していること。また比較的単純な勧善懲悪のグローバルなヒーローのポケモンに対し、原作者の敗戦の記憶を色濃く反映したアンパンマンは、より日本人の集団的記憶に訴えかける要素(東日本大震災でも人々に元気や勇気を与えました)を備えるローカルヒーローと言えるかもしれません。また別の観点から、幼児を主対象としたアンパンマン・グッズを買うのが親世代であるのに対し、自身がネットを使い、アニメやゲームを通じて異文化に馴染んでいる世代にポケモンの人気があるという違いを指摘する向きもあります。
 このように、文化と経済、社会構造は密接に関連し、グローバルとローカルは複雑かつ重層的につながっています。今日の日本は「質の良いモノづくり」だけでは生き残れなくなり、既成のビジネス、ライフプラン、キャリアの体制が崩れつつあります。特定の学問領域に囚われず、身近な問題から世界の反対側で起こっていることまで、いろいろなイシューを自由な発想で結び付け、批判的かつクリエイティブに、一緒に考えてみませんか?

プロフィール(経歴、趣味、等)

 小学一年のときに、父の留学のためオーストラリアで暮らしました。期間は一年と短かったのですが、自分の文化的帰属意識を混乱させるには充分であったようで、mixed-raceではない(血統は100%日本人です。そんなものがあるなら、ですが…。)けれど、mixed-upな(自分がナニジンかわからない)人間として生きてきました。研究テーマに「人や文化の国際移動」を選んだのは、家族史を特に意識してではなかったのですが、最近になって、父親が長春生まれであること、祖父母の代から大陸との間を行き来する生活をしていたこと、戦後も父の家族が中国に留用日本人として残ったこと、母方の曾曾祖父が神戸のイギリス商館に勤めていたことなどが、自分のものの見方に間接的に影響しているのかもしれないと思い始めました。自分の家族だけをとっても、日本人が近隣地域との関係、そしてグローバルな国際関係のなかで生きてきたことが分かります。日本人は、昔から日本の四島だけで暮らしてきたように思いがちですが、そのイメージは戦前の歴史的記憶を書き換えるべく、戦後に作られた四島神話の産物です。難しい過去との対話をしつつ、グローバルな今について考察することが大事だと改めて実感しています。

研究内容

 日本からアメリカやカナダに渡った人々と文化について、歴史学および文化研究の分野から研究しています。博士論文では、日系アメリカ人約12万人が、第二次世界大戦中に太平洋岸から強制移動させられ、収容所に収監された事件、いわゆる「日系アメリカ人強制収容」が、戦後の合衆国全体の市民的自由に及ぼした法的・政治的・社会的影響について、特に反共主義が世の中を席巻した1950年代と、ベトナム反戦運動やエスニックパワーを求める運動が大きな社会改革を巻き起こした1960年代末から1970年代初めのコンテキストのなかで考察しました。また、バンクーバーとロサンゼルスを中心にフィールドワークを行い、祭り、和太鼓、音楽などの参与観察から、強制収容以後、日系コミュニティがどのようにしてエスニックなアイデンティティを再創造していったのか、奪われたコミュニティを再建していったのかについて調査してきました。直近の研究テーマは、アリゾナ州の日系人強制収容所の歴史で、メキシコ国境地帯であり、また先住民居留区なども多く存在するアリゾナ州の収容所における、日系人の生活、そして彼らと他のエスニック・グループとの関係などについて史料を集めています。

主要業績

単著:
  • 『日系カナダ人の移動と運動-知られざる日本人の越境生活史』(小鳥遊書房、2020年)
  • The Rise and Fall of America’s Concentration Camp Law: Civil Liberties Debates from the Internment to McCarthyism and the Radical 1960s (Temple University Press, 2019) [アメリカ大学図書館協会のCHOICE Outstanding Academic Titles 2020に入選]
  • 『日系アメリカ人強制収容と緊急拘禁法―人種・治安・自由をめぐる記憶と葛藤』(明石書店、2009年)
共編著:
  • 佐々木隆監修、和泉真澄・趙無名編著『アメリカ研究の理論と実践-多民族社会における文化のポリティクス』(世界思想社、2007年)
翻訳書:
  • ミチコ・ミッヂ・アユカワ著、和泉真澄訳『カナダへ渡った広島移民―移住のはじまりから真珠湾攻撃前夜まで』(明石書店、2012年)
  • ロイ・ミキ、カサンドラ・コバヤシ著、佐々木敏二監修、下村雄紀・和泉真澄訳『正された歴史―日系カナダ人への謝罪と補償―』(つむぎ出版、1995年)
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