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アジア・太平洋コース 教員

浅羽 祐樹(アサバ ユウキ)

浅羽 祐樹
英語表記 Yuki ASABA
職名 教授
研究者情報 研究者データベース

学生へのメッセージ

 日韓関係は慰安婦問題や「徴用工」問題、それにレーザー照射問題で1965年の国交正常化以降「最悪」と言われる一方で、K・POPに「ハマる」10代女子や『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著・斎藤真理子訳、筑摩書房、2018年)に自分の姿を重ねる人も数多くいます。それだけ関係が重層化し、それぞれが独自の論理やメカニズムで動くようになったということですが、その分、自分が慣れ親しんでいない事項や領域、さらには「彼ら」が一見「イミフ」で手に負えないように映ります。
 日韓関係に限らず、まずは自分が「面白い(interesting)」と思うものを見つけるところから始めてみてください。そして、「ググる」だけでなく、たくさん本を読み、友人や先生と語り合うことで「我が事」を少しずつ深めていくことが大切です。そうすると、自分が面白いと思っていることにちっとも共感してくれない人もいるし、自分が気にかけないことを心から大切にしている人もいるということに気づきます。だとすると、文書であれ口頭であれ、どのように「プレゼン」しないといけないでしょうか。どのように目を通し、耳を傾け、フィードバックを返すのが、「他者と共にある」ためにふさわしい姿勢でしょうか。
 この広い世の中には、実に多様で、時に相容れない「利害=関心(interests)」や価値観がそこここにあふれています。自分にとっての当り前を押し付けるのではなく、一人ひとりが自由で対等ななかで、「みんなで」どのようにコンセンサス(合意)を形成し、社会を成り立たせるのかが、今、切実に問われています。大学という「学びの共同体(learning community)」も、志を同じくする結社も、「あなた」が新たに連なることで常に再構築される過程そのものです。
 なにより、「あなた」自身、何者(somebody)かになろうとするが未だ何者でもない(nobody)というのが青春時代です。だからこそ、「未だ来たらざるもの」を来たらすために、あれこれ試行錯誤を重ねるのです。
 自分が「面白がっていること」や「利害=関心」だけでなく、ほかの誰かの「利害=関心」にも互いに関心を寄せ、共に面白がることで、世界はそれまでとは異なって見えてくるでしょう。「私たち」/「彼ら」のボーダーも揺らぎ、引き直しされるかもしれません。「いま、ここ」の「である」とは別様に「なりうる」というのは、この「私」の、そして「みんなの」希望ではないでしょうか。
 Make the unfamiliar familiar, and the familiar unfamiliar.

プロフィール(経歴、趣味、等)

 学生時代を過ごし、新婚生活を苦労しながらも楽しんだ京都に家族で20年ぶりに帰ってきました。京都は今でこそ大切な場所ですが、1995年4月に住み始めたときは嫌で仕方がありませんでした。一浪したのに志望校にはまた落ち、外交官になるという将来設計も挫かれたからです。
 ただ、立命館大学国際関係学部や交換留学先のUniversity of British Columbia(Vancouver, Canada)で思いがけない出会いがいろいろあり、小林誠、関寛治、西川長夫、Johan Galtung、Kalevi Holstiの各先生のように私も研究者になりたいと、高校生の頃はまったく知らなかった世界を志し、未来を思い描くようになりました。
 その後も、当初進みたかったオランダの大学院には推薦状が郵便事故で届かず、キャリアをデザインするというよりはドリフト(漂流)してばかりでした。韓国にたどり着いたのも「誤配」でしたが、「置かれた場所で咲きなさい(bloom where planted)」というのは、かけがえのないギフトになりました。
 そしてまた、あれほど憧れた東京ではなく京都、しかも出身大学のライバル校に「置かれ」、これまでいちども教えたことがないコリア語も担当することになりました。誰しも「ジョブチェンジ」(転職だけでなく、期待される役割の変化も含みます)をするたびに新しい「ことば」を身につけることが欠かせませんが、「第二言語教授」という「第二言語習得論」にも、一回生になったつもりで楽しみながら全力で取り組みます。

研究内容

 大統領の弾劾、慰安婦問題や徴用工問題に対する司法(裁判所)の判断など一見「分かりにくい」韓国政治を比較政治学の中に位置付けることで、その「内在的論理」を解き明かそうとしてきました。「ひとつの国しか知らないということはその国についても何も知らないということと同じことである(Those who know only one country know no country)」といいますが、比較という方法を身につけることが欠かせません。最近は、司法も大統領/内閣や議会、国民からの反応をあらかじめ織り込んで行動を選択しているとみなす「司法政治(judicial politics)」という分野を開拓しようと取り組んでいます。
 また、日韓関係についても「全体像」を示したいと思っています。具体的には、1965年の国交正常化、90年代の河野談話やアジア女性基金、2015年の慰安婦合意など歴史問題に関する交渉時に、双方の政策決定者が安保協力との争点連関や共通の同盟国である米国からの期待、国内世論による受容可能性をどのように認識していたのかを明らかにし、さらにはそのズレがその後の合意のゆくえにどのように関連しているのかについても分析するつもりです。

主要業績

韓国政治
  • 「韓国憲法裁判所における大統領弾劾審判の比較研究―盧武鉉と朴槿恵」『年報政治学』2018年度第I号(木鐸社、2018年)pp.96-122
  • 『知りたくなる韓国』(有斐閣、2019年5月刊行予定)、新城道彦・金香男・春木育美との共著
日韓関係
  • 『戦後日韓関係史』(有斐閣、2017年)、李鍾元・木宮正史・磯崎典世との共著
  • “38 seconds above the 38th parallel: how short video clips produced by the US military can promote alignment despite antagonism between Japan and Korea,” International Relations of the Asia-Pacific, forthcoming, Kyu S Hahn, Seulgi Jang, Tetsuro Kobayashi, Atsushi Tagoとの共著
「第二言語習得論」
  • 「新しい「ことば」の学び方―「一身にして二生を経る」時代を生き抜くために」『SYNODOS』2018年3月30日 (外部サイト) 、田村優輝との共著
  • 「「ジョブチェンジ」し続けるための自分への先行投資法」『SYNODOS』2018年12月26日 (外部サイト) 、鈴木悠司との共著
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