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アジア・太平洋コース 教員

殷 晴(イン セイ )

教員紹介写真(殷晴先生)   (84963)
英語表記 Qing YIN
職名 助教
研究者情報 研究者データベース

学生へのメッセージ

 歴史を切り口に、中国のことを皆さん一緒に考えていきたいと思います。
 中国に対して、どのような印象を持っていますか。日本と同じく儒学を重んじる伝統があり、中華料理も日本人の食生活に深く浸透していますので、諸外国の中でもとくに近しい存在に感じられるかもしれません。しかし一方で、権威主義体制や周辺地域への圧力、アメリカとの対立など、物騒な国として映ることもしばしばあるでしょう。
 この一見すると多くの矛盾を抱えている隣国を理解するためには、その歴史を知ることが不可欠です。むろん、知ったとしても中国が好きになる必要はありません。しかし、感情的な判断よりも、理解に基づいた評価の方が互いにとってフェアなのではないでしょうか。
 高校の公民や歴史の授業ですでに中国史や日中関係について学んだことがあるかもしれません。しかし、たとえ「もう分かっている」と思われてきたことであっても、多様な視点を知ったうえで改めて考えてみると、きっと新しい景色が見えてきます。その瞬間の驚きを、是非経験して頂きたいと思います。
 また、「歴史」と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべますか。――無味乾燥な年表、多すぎる人名と地名、意味不明な専門用語…?私が高校生だった時には、そう思っていました。それが故に、大学への進学にあたって絶対に避けたい専門分野の1つが歴史学でした。
 しかし、受験の束縛から解き放たれ色々な本を自由に読んでいるうちに、だんだんと歴史学に魅了されていくようになりました。
 私にとっては、歴史研究は推理小説のようなものです。なぜなら、歴史学者と探偵は、直面する問題も仕事のやり方も共通しているからです−−−−様々な人が各々の視点に基づいて過去を語り、その記述には意図的な歪曲も無意識の思い込みもあります。事件の全貌を解き明かすためには、複数の証言を突き合わせながら、言葉の真意を見極めなければなりません。
 そうした苦しみと楽しみを気軽に味わってみたいなら、まずはアガサ・クリスティの隠れた名作『五匹の子豚』を読んでみてください。この本に共鳴と感動を覚えたら、是非歴史学の世界に足を踏み入れてみましょう。

プロフィール(経歴、趣味、等)

 北京生まれの北京育ち。中国の大学でジャーナリズムを6年間専攻し、修士号を取りました。その後は来日して改めて歴史学の修士課程に入り、9年かけて歴史学の博士号を取得しました。
 語学については、学部の時の第二外国語はフランス語でしたが、一年足らずで挫折してしまいました。その後、偶然のきっかけで日本語を勉強しはじめ、現在まで続いています。
 以上の経歴からも分かるように、長期的な計画をほとんど持っておらず、何かに興味を感じたらとりあえず一生懸命に取り組む、イノシシのような性格です。
 座右の銘は「独立之精神、自由之思想」です。学部時代にこの一文を知り、以来、人生の指針としています。趣味は料理本を読むこと、料理をすること、美味しいものを探すことです。そして猫が大好きです。

研究内容

 中国近現代史を専門とし、主に二つの分野で研究を進めてきました。
 一つは情報伝達を切り口とした清代政治史の研究です。「政権の情報統制と情報発信」および「社会の政治情報に対する需要と言論活動の展開」という二つの角度から、清代における政治情報の伝播のあり方を分析し、メディアと政治の相互関係を研究しています。
 もう一つの分野は1900〜30年代の日中関係史です。『順天時報』という、日本人が北京で発行していた中国語日報に注目することで、満洲事変以前における日本側の対外宣伝やそれに対する中国側の反応を考察しています。

主要業績

  • 「清代における邸報の発行と流通:清朝中央情報の伝播の一側面」『史学雑誌』127編12号、2018年12月。(第六回史学会賞受賞)
  • 「清末における「官報」の発行と政府による情報発信の変容」『歴史学研究』996号、2020年5月。
  • 「第二次アヘン戦争と清朝の情報伝達」『史学雑誌』130編10号、2021年10月、59−83頁。
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