ヨーロッパ地域 教員一覧

中野 幸男(ナカノ ユキオ)

中野幸男
英語表記Yukio NAKANO
職名助教
主な担当科目ヨーロッパ地域文化特論4(ヨーロッパの周縁と言語・文化)、
ロシア語関連科目
所属コース名ヨーロッパコース
研究者情報研究者データベース「研究者情報」(オリジナルサイト)

学生へのメッセージ

 授業で「ロシアは頭ではわからない」というチュッチェフの格言をロシアのメンタリティとして紹介すると、「頭でわからないものを信じるのは不合理だ」のように学生から言われたりします。
 ずっと合理的な彼らからすると素朴にロシアらしさを信じているように見えたのかもしれません。

 幻想ですよね。ロシアらしさも幻想で、自分の願望を投影しているだけであって、国民性も幻想で、~らしさなんて自分の願望でしかありません。
 それでもなお、残るロシアらしさを素朴に信じているということになるのでしょうか。
 ロシアを鏡として自己探求をしているのかもしれません。

 ロシア史やロシア文学など、20年以上親しんでいても授業のしたことのない科目を同志社で教えることになって数年経ちます。
 毎回学生が寝ないように、関心を持つように作ろうとすると、ロシア史やロシア文学の話でなくなることがあります。
 私が受けたことのある面白い授業を再現しようとすると、そこまで入念な準備はできません。
 日本やロシアやアメリカの恩師はいずれも本をいっぱい読む人だった気がします。

 私が面白いと思うものがもちろん学生が面白いと思うわけではないので、過剰なロシアのダサさが私は好きなのですが、高校時代の私のように美しいロシアを見ようとするとズレるかもしれません。
 チャイコフスキーやドストエフスキーなどの安易なロシアが当時の私は好きで、そこに私はアメリカと違う美しいロシアを見ようとしていたら、大学一年時に辞書と教科書を作った偉い先生から「それは間違っている」と言われました。
 どこが間違っているかもわからなかったので、心の中で毒づいていたら、そのうちにアメリカにロシア研究しに行くことになりました。

 アメリカではカザフ人の女性の先生とか現地で知り合ったロシア人、ウクライナ人やスラヴ語・文学専攻の院生や日本人会の人たちと話し、日本人を除けば、ロシア語でばかり話していて、英語でまともに会話していたのは大学の人以外だと隣の家のアメリカ人夫婦と、その隣に住んでいたパンジャーブ人の親子くらいでした。ナボコフが好きな学内に住んでいる高齢者の女性ともよく話していました。あとはディスポーザーが壊れたとか、上の住人がシャワーをすると水漏れがすごいとか苦情の電話でした。近所にスラヴ系書店とシネフィル向けのレンタルビデオがあり、この間グーグルマップを見ていたら消えていました。

 その後フランスでもロシア人作家の未亡人の家に下宿していたり、9区のアパートに住んでいた時も、割とロシア語を話していました。文化センターの人や、YMCA書店の人、研究者もみんなロシア語で会話していました。いろんな地域でロシア語が聞こえると割と話していました。偶然の出会いのようなエピソードを周りにする人が多く、そういうものだと思っていたからかもしれません。

 ほんとうにロシア語ほど役に立つ言葉はありません。

プロフィール(経歴、趣味、等)

 1977年福岡県福岡市生まれ。男子校時代の市川高校を卒業した後、浪人したために駿台予備校を経て、東京外国語大学ロシア語科に入学。同大学卒業後は同大院で仮面浪人。主に神保町でイタリア書房の店員をしていた。東京大学大学院に入学。憧れの東大でも最低限の授業に出ただけで、日本橋の丸善でバイト三昧。博士課程進学後は運よく文部科学省長期留学生派遣制度を貰いモスクワ大学に3年間留学。初めて研究者らしい生活をするようになる。帰国後は思ったほど反響も職もなく派遣社員として働き、単位取得満期中退。その後運よく学振PDを取れたためにスタンフォード大学スラヴ科でVisiting scholarとして1年半過ごす。帰国して学振終了後は島根県立大学で英語の嘱託助手として勤務。その後、東大研究員、関東学院大学非常勤講師などを経て現職。

 映画は好きです。最近では『修羅雪姫』など梶芽衣子の主演作品、藤田敏八の秋吉久美子主演作品や、タイのキック少女もの『チョコレート・ファイター』シリーズを見ています。ロシアの監督ではアンドレイ・ズビャギンツェフが好きです。『女狙撃兵マリュートカ』『一年の九日』『鬼戦車T-34』や『人生案内』などソ連映画のダサさが好きです。アニメは京アニを応援しています。マンガも好きです。山本さほ『岡崎に捧ぐ』や松田洋子『薫の秘話』のような話が好きです。マンガ家では水あさとと志村貴子が特に好きです。音楽も好きです。ロシアのテクノポップは哀愁のあるメロディーがタクシーによく合っていて、タクシーのラジオではAvtoradioを聞いてる人が多かったです。Logic ProとCubaseをずっと使ってますがよくわかりません。音楽理論も教会旋法とかどうポップスに使われているのかもわかりません。地下アイドル寄りの音楽ではCY8ERやYUC’eなどYunomi周辺の音楽を聞いています。Porter RobinsonとかJacob Collierとか宅録ばっかり好きなことがわかりました。

研究内容

 専門はロシア亡命文学。博士論文までのテーマは学部時代からずっとアンドレイ・シニャフスキーというソ連の反体制作家。国内外で作家の知人に会い、インタビューを取り、アーカイヴ資料を見ながら二つの異なる博士論文をモスクワ大学と東京大学に提出、学位を得る。主にアンドレイ・シニャフスキーは1970年代の「第三の波」と言われる時代の亡命作家である共とに1990年代はソルボンヌ大学教授としてソルジェニーツィンに並ぶ存在感を持つ知識人であった。1990年代以降「ロシア亡命文学」も大きく変わり、国境を行ったり来たりする作家も増えた。 最近ではロシア語話者が英語やドイツ語で書くtransnational/translingual literatureと言われるような文学先品も増えてきている。

 最近の関心は、このtransnational/translingual literatureと映画など他メディアの展開の研究。国外で発表し続けているのは、アーカイヴ資料を基にした20世紀ロシア文学史の再考であり、ブルームズベリー・グループと深い関わりを持ったドミトリー・ミルスキー、ジョージ・オーウェルに『1984』のアイディアを与えたグレープ・ストルーヴェ、パウル・ツェラーンやジャン・スタロヴァンスキ、イニャツィオ・シローネの友人でありフィレンツェで学位を取ったマルク・スローニムなどの文学研究者/文学史執筆者について調べている。アーカイヴ資料を使ったザミャーチンやマルク・アルダーノフの研究も発表した。最近ではロシアにおける日本文化の受容やロシアの現代文化について執筆し、「ソ連の」インターネットについて調査している。 


主要業績
論文・研究ノート
  • 「B・エロフェーエフ『酔いどれ列車、モスクワ発―ペトゥシキ行』」(水野忠夫編『ロシア文学:名作と主人公』自由国民社、2009、作品解説)
  • 「亡命ロシア文学研究者 グレープ・ストルーヴェ研究」(『境界研究』第1号、2010年、研究ノート、145-164頁)
  • "On the History of the Novel We, 1937-1952: Zamiatin's We and the Chekhov Publishing House." Canadian-American Slavic Studies 45, 2011
  • «История издания романа «Мы» на русском языке» // Новый Журнал. №277. 2014.C.319-325.
  • «Из переписки Глеба Струве» // Новый Журнал. №282. 2016.С.313-317.
  • «Американский период Марка Алданова» // Новый Журнал. №286. 2017.С.309-315.
  • 「ロシアでのマンガ・アニメの受容と若者文化」『ユーラシア研究』57号、2018年、49-52頁.
翻訳
  • アンドレイ・シニャフスキー『ソヴィエト文明の基礎』(みすず書房、2013、共訳)