2022年度イベント報告
2023/1/9 | グローバル地域文化学会講演会“The Weight of the Past: Dilemma of American Foreign Policy in Historical Perspective” を開催しました |
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2022/7/30・31 | 高大連携歴史教育研究会第8回大会が開催されました |
グローバル地域文化学会講演会 “The Weight of the Past: Dilemma of American Foreign Policy in Historical Perspective” を開催しました
2023年1月9日(月・祝)14:00~15:20に、対面による講演会 “The Weight of the Past: Dilemma of American Foreign Policy in Historical Perspective” が開催された。
講師のトーマス・アラン・シュウォーツ(Thomas Alan Schwartz)先生は、ヴァンダービルト大学歴史学部で長く教鞭をとる一方、米欧関係史、とくにアメリカ合衆国と(西)ドイツの関係を検討してきた。その主な著作としては、第二次世界大戦直後の占領期、1960年代のジョンソン政権期、そして1970年代のキッシンジャー外交があげられる。これらの研究の成果を活用しつつ、シュウォーツ先生からは、第二次世界大戦後から現在に至る歴史的な視点から、アメリカの対外関係を概観する議論が提示された。
シュウォーツ先生の議論の特徴は、アメリカをヨーロッパ国家とみなし、アメリカとヨーロッパの紐帯を重視した対外関係史を提示したことにある。1950年代から60年代に構築された緊密な米欧協力が、1970年代以降も基本的には継続した。近年は、アジア太平洋地域の重要性が認められ、またアメリカ国内に対外関与を忌避する意見が生じたため、米欧関係が一時的に不安定になった。しかし、アメリカ外交における米欧関係の重要性が消失することはなく、ウクライナ危機によってその重要性は再確認された。
講義終了後には、出席者との質疑応答が行われた。ウクライナ危機の背景として指摘されるドイツ統一とNATO拡大への評価、アメリカにとってのヨーロッパとアジアの相対的な重要性、アメリカ外交における核兵器の役割などの質問がなされ、シュウォーツ先生よりそれぞれに回答があった。出席者から重ねて質問がなされるなど、限られた時間ではあったが、活発な議論が行われた。日本国内では米欧関係に関する専門的議論が提示される機会が少ないのに対し、ウクライナ危機を契機にヨーロッパ国際関係が改めて注目される状況にある。アメリカにおける米欧関係の第一人者による本講演は、米欧関係に関するこのギャップを狭める貴重な機会となった。
2022年7月30日(土)・7月31日(日)、高大連携歴史教育研究会第8回大会が開催され、本学部教員・学生が参加しました。
2022年7月30日(土)・7月31日(日)、高大連携歴史教育研究会第8回大会「探究型の開かれた、架橋する歴史教育」が同志社大学を開催校として対面とZoomのハイフレックス方式で開催され、250名近くが参加した。本学部教員が実行運営委員となり、全大会や開催校パネルの企画や報告も行ったほか、本学部学生・卒業生も登壇、またはスタッフとして運営に参加した。なお、本大会は同志社大学学会開催補助金の援助を受け開催された。プログラムは下記研究会HP参照。
高大連携歴史教育研究会
以下、概要を紹介する。
7月30日(土)の全体会「疫病・紛争の21世を移動の人類史にどう位置づけるか」では森山央朗氏(同志社大学神学部教授)が司会を務め、玉木俊明氏(京都産業大学教授)・皆川雅樹氏(産業能率大学准教授)が講演を行った。玉木講演は「ヒト・モノ(物品)と情報(カネ)の移動を中心にした世界史」と題し、移動が人類の知的水準、生活水準、経済水準を向上させてきたこと、工業繊維の登場により人口増大に寄与したこと、コロナにより人の移動が新たな段階に入りつつあることを論じた。皆川講演は「人・モノ・情報の移動からみた「日本」の「文化」―「唐物」と「国風文化」との狭間から考える―」と題し、唐物研究の立場から、近年の国風文化をめぐる議論を紹介し、文化概念の再整理が必要であるとの認識を示した。総合討論では、21世紀の戦争のありようの劇的な変化、ビットコイン登場のインパクトなど、今後の世界の展望に影響を及ぼし、かつ予測を困難にする新しい要素について語られた。また、近年「国風文化」が日本史の枠組みを超越して議論されるなか「文化」概念のズレが生じているのではないか、という問題提起から、日本史と世界史の概念用語のズレを吟味することの重要性が浮き彫りとなった。
7月31日(日)には本研究会の各部会と公募・開催校の企画による6つのパネル報告が三つの会場で並行して行われた。第2部会パネルでは高校で2022年度から始まった新科目の歴史総合との関連で部会が開発運営する教材共有サイトについて報告された。第3部会パネルでは2023年度から始まる世界史探究・日本史探究と世界史B・日本史Bとの違いがテーマとなった。第4部会パネルでは、歴史総合の評価と学力観について、第5部会パネルでは、大学における歴史教育の今日的課題と新たな可能性について議論された。新設された特別部会のパネルでは、探究的な歴史学習をどう支援するかについて、公募パネルでは近年教育現場で導入が進む知識構成型ジグソー法の得失について議論された。
大会の最後を締めくくる開催校パネルでは、「歴史教育で高校・大学・地域をつなぐ」と題し、高校・大学教員あるいは生徒が歴史に主体的に関わりつつ、学校の教室の内と外を横断し展開される歴史教育の三つの事例を取り上げ、それらを通じて今大会のキーワードのひとつである「架橋する」歴史教育の課題と可能性について議論した。
報告1「歴史で高校・大学・地域をつなぐ」(親和中学・親和女子高等学校長・勝山元照氏、同志社大学グローバル地域文化学部4年次生・井上乃晏氏)では、歴史総合、課題研究の開発をリードした神戸大学附属中等教育学校(神大附)で展開された、高校生による主体的な歴史探究の実践例を当事者である井上乃晏氏に語ってもらい、歴史教育における井上実践の意味及び背景となった神大附の教育について考察した。
報告2「スペインにおける歴史教育と記憶の諸問題―内戦を事例として―」(同志社大学グローバル地域文化学部助教・アンドレス・ペレス・リオボ氏)では、主に、スペイン内戦の記憶と教育方法を取り上げ、近年の諸教育基本法の度重なる改定と政治の介入を背景とする現在の高等学校のカリキュラムにおける歴史科目の位置、内容、求められるコンピテンシーを検討した。最後に、高校生が内戦について探究し、積極的に実習に参加し、家族と共同体全体が関わる南スペインにある小さな町の高校教師の試みを紹介した。
報告3「歴史と社会をつなぐメディア―学習マンガとPodcast―」(京都産業大学准教授・梶原洋一氏、株式会社COTEN・室越龍之介氏)では、西洋中世史研究者である報告者がプロット監修・考証の役割で参画した児童向け歴史学習マンガ、番組制作に協力したPodcast「歴史を面白く学ぶコテンラジオ」を紹介した。後者の制作スタッフ兼パーソナリティがオンラインで登壇し、Podcastの概要やねらい、利用者・視聴者からの反響などを説明した。
コメント「越境する歴史教育―非史学の私学で歴史をおしえること及びその可能性―」(同志社大学グローバル地域文化学部准教授・向正樹氏、ホリプロアナウンス室・廣岡まりあ氏)では、大学生の50パーセントを占める私立文系学部における歴史教育の重要性を考察した。非史学系の学部でも、広い意味で歴史に関わっていく人材が存在する。これらの在学時・卒業後における歴史との多様なかかわり方を視野に入れ、高校や大学の歴史教育がもつ可能性を考える必要性について議論した。
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